4月10日、札幌市・農連会議室で、北海道「農」ネットが主催し、「はじめてつくる野菜教室」が開かれた。この教室は、北海道の安心・安全な食・農とふれあうことを目的に今年はじめて開いた。
はじめに主催者を代表し、杉谷・道本部副委員長が、「この教室は、明日の北海道の農業を学習・実践をとおして考えてもらうために企画した。5回の講習を受けて5月から実際に野菜作りをしていただくことになる。北海道の安全な農作物をまもっていくためにもぜひ知識を深めてほしい」とあいさつした。
その後、酪農大学・長谷川豊特任教授が「でき秋を左右する土づくり」と題して講演した。
長谷川教授は、「野菜をつくるのうえで、土づくりは重要なポイント。土の中にいる微生物を増やすことで強く安心・安全な土が出来上がる」と述べたうえで「化学肥料の問題点は、ほうれん草の苦みの元である『硝酸態窒素』。土が単粒化し硬化してしまう。酸性になると土壌から重金属が出やすくなる。消石灰は水に溶けやすく流亡しやすいので効率悪い(工程が増える)。酸素・水・栄養分を植物が摂取しやすい、『団粒構造』になるのが良い。土壌(表層2cm程度まで)に生物がたくさんいると分解してくれる。微生物(堆肥投入で培養する)とミミズ(イトミミズのような小さいものが望ましい)が生命活動で勝手に団粒構造の土づくりをしてくれる。生物には、有機肥料が良い(長谷川豊・作※「日高の奇跡」など)、植物残渣(収穫後の枝など)も。同じ場所で同じ作物を育てると輪作障害が起こるが、生物がたくさんいる環境では輪作障害が発生しない」と強調した。
※「日高の奇跡」は、落葉(または木製チップ)、馬糞(稲わら(納豆菌))、海産物の廃棄物などを水と混ぜて酸化発酵させ、塩分も分解し、有機肥料として最適になる。福島の郡山で、セシウム137除去の実験中。 |
また、 「『日高の奇跡』を散布することで、次のようなさまざまな効果が実証できた。大量に飼育されている家畜(乳牛、鶏、豚など)から出る糞尿には、相当の塩分が含まれている。また、敷き藁には、水分が多く放置すると硝酸態Nが増殖しメタンガスが発生し、同時に悪臭を発する。敷き藁に「日高の奇跡」を散布する事で悪臭の改善、硝酸態Nが抑制されて畑の作物が順調に生育するとともに、それを餌とする家畜の体内が健康になる。このたい肥には海産物(魚類、貝殻、海草、ヒトデなど)も混合されているが、塩分集積は全くなく、ミネラルが豊富で作物に必要な微量要素を供給してくれる。土中に含まれる重金属は多種多様であるが、「日高の奇跡」を散布する事で、これらの溶出を防いでいる事が分った」と自ら開発した、たい肥「日高の奇跡」の効果について説明した。
さらに、「化学肥料が普及する以前の日本農業は、農耕用の馬、たい肥を取るために政府から貸与された牛、お菓子や魚、洋服など物々交換する為の豚、日常のタンパク質確保の為の鶏、寒い冬を乗り切る為のセーターや靴下、手袋の材料となる羊などを飼育しており、その糞尿が田んぼの肥料となる。稲藁をそれらの家畜の敷き藁として使い、糞尿とともに堆肥場に交互に堆積する。稲藁には寒さに強い『バチルス菌』、畜舎の土間には、『菌根菌』や『糸状菌』、『放線菌』、『乳酸菌』などが棲み糞尿や稲藁を分解してくれる。その家畜の糞尿を堆肥場に交互に積み、更に購入した鰊粕を間に挟む。1年間かけて堆積した、たい肥は切り返しを一度もしないのに、春までに肥料バランスの取れた良いたい肥となって水田に散布する。豊富に撒かれたたい肥の中に棲む微生物は、土中で分解して肥料を作り出し稲に供給する。田植え後、草取りと、虫の飛来を予防するだけで出来秋は、『収量と美味しい』米を保証してくれる」と述べたうえで、「現在の農業は化学肥料・農薬が主流で昔のような良いたい肥はほとんど使われていない。当然のように、土地は痩せ技術も高度化され、収穫物は、同じ大きさ、形、量など美味しさよりも見た目を重視するような品種を作り栽培している。農業は、誰にでも真似のできない高度な技術を必要とする難しい産業へと変化している。これからの日本農業の発展は、農業以外の人でも参入出来るような、もっと易しい農業を行うべきと考えた。その為には土壌改良して団粒構造の土にすることによって、健康な土壌となり病気や虫がつかない安心・安全で美味しい農作物ができる」と述べた。
次回の講義は4月15日(月)。テーマは「畑の設定と準備」です。
≪酪農大学・長谷川豊特任教授の経歴≫
ホーマックの農業分野進出の相談役、東日本大震災によるホーマック店舗の海水被害の消臭指導(家畜糞尿を利用した生物浄化技術)。NPO法人農業塾風のがっこう理事長。